第167章

「見てないわ」

「このカルロスって人……なんだか見覚えがあるの。あたしを見る目が、ぞっとするくらい怖くて……」

久世雪菜は胸元を押さえ、荒い息を必死に整えた。顔色は紙のように白い。もしも自分が狼を家へ招き入れてしまったのだとしたら――そう思っただけで背筋が冷えた。

だからか。だから今夜、あんな火事が突然――。

あれは事故じゃない。誰かが、意図して火を放った。

久世家の縄張りで放火だなんて、そんな真似をする人間は自殺行為も同然だ。必ず代償を払わせる。

「お母さん。会ったことはなくても、彼の兄なら見たことあるでしょ。あの人は酒井正志。酒井裕也の実の弟だよ」

「当時、正志は突然、帝都...

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